アプリケーションノートコールドチェーン
生体サンプルや試薬を、移動の際あるいは分析前に実験室のベンチの上で低温に保つのに一般的に使われるのは氷です。氷は「安価」で入手しやすく、簡単に捨てられるため、疑問を投げかけられることなく長年にわたり使用されてきました。しかし、氷を用いる冷却には問題が伴います。 氷に直接差し込んだチューブサンプルはうまく整理(整列)できず、濡れていて、氷が溶けると一定の場所におさまりません。チューブはサンプル温度の均一性や一貫性を妨げるエアポケットに囲まれており、氷が融解した後の氷水の中で、サンプルが沈んだり浮かんだりしないか常に気を付けていなければなりません。さらに、氷は不衛生でもあり、サンプルを汚染する可能性のある微生物や核酸分解酵素をたくさん含んでいます。
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サンプルを直接氷に差し込む
現在の一般的な冷却手段で、15本のサンプルを直接氷に差し込んで冷却する。しかし、この方法ではサンプルがうまく整理・整列できず、非均一で断熱性のエアポケットが砕氷の中にあるためにサンプル温度が一様にならず、氷中に存在する微生物や核酸分解酵素にサンプルが汚染される危険性も高い。 |
氷上のCoolRack モジュール
左と同様、15本のサンプルを外温に超高熱伝導合金製チューブブロックCoolRackに配置する。 氷上に載せると、CoolRackはすぐに<4℃となり、全てのサンプルを整列させ、均一な温度に保つ。CoolRackにより、日々のサンプル処理の再現性が高くなる。 |
CoolBox XTワークステーション
15本のサンプルをCoolBox XTアイスフリー冷却システムに設置する。サンプルを10~16時間まで約1℃の低温に保つことができるCoolBox内部の冷却コアにより、サンプルが低温に保たれる。 冷却コアは繰り返し使用可能。サンプルが整理されず濡れてしまう問題や、サンプル誤認や汚染といった問題が解消される |
氷に関連する最も大きな問題はサンプルの汚染(コンタミネーション)であり、微生物や核酸分解酵素による汚染はサンプル混物の主源であると認識されています。製氷機や、氷の運搬に使われる容器の洗浄や管理に不備があった場合、氷が汚染されてしまいます。研究補助員が氷を不用意に扱ったり、長期間放置したまま氷の交換をしないなど、悪い習慣がある場合にも、汚染が起こります。
さらに、直接氷中に置かれたサンプルと媒体の接触は可変的で、空気が不均一な断熱性のポケットにチューブが囲まれているため、サンプルの冷却が不均一で再現性がありません。ラベルが濡れ、判読しにくくなったり、丸ごとはがれてしまうこともあります。氷は「安価」または「無料」と思われがちですが、氷を製氷機までとりに行くために作業が中断されてしまうことなどを含み、製氷機の購入や管理には費用が発生します。
チューブをCoolRackの中に配置する、またはアッセイプレートをCoolSinkに配置することにより、簡単で費用のかからない方法で、サンプルを直接氷に接触させず均一にサンプルを冷却することができます。 融解した氷浴などの液体温源を用いる場合、堅固で安定した熱伝導性の土台としてThermalTrayモジュールを氷浴槽の中に入れて、CoolRackまたはCoolSinkを持ち上げることができます。 さらにこの方法は、サンプル容器を氷から離す一方で、下に示すように、氷が溶けてそのほとんどが水になってからもサンプルを低温に保ちます。
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氷中のThermalTrayに置いたCoolRackモジュールは、サンプルを低温(<4℃)で長時間保つ。9Lバケツに入った氷と、CoolRackとThermalTrayの組み合わせは、氷が溶けて水になっても、14時間までサンプルを濡らすことなく、一定に低温に保つことができる。 | ThermalTray LPとCoolRack CF45: ThermalTrayは氷容器の底にしっかりと設置され、堅固・安定な土台となって、サンプルを低温で整然とした状態に保ちつつ、そのサンプルを氷より上の位置で支える。 |
96ウェルプレートを氷上に直接バランスをとって置いた場合、どのウェルにおいても生物活性の阻害に必要な低温(<4℃)には通常ならないことを認識している科学者は多くありません。氷上に直接置いた典型的な96ウェル平底プレートでは、<4℃の冷却は96ウェルのどのウェルでも達成されていません(A)。さらに、ウェル間の温度にかなりのばらつきがあります。
96ウェルプレートをCoolSinkモジュールに設置したうえで氷上に置くと、プレートはCoolSinkと均一に接触し、すべてのウェルの温度が<4℃となり、ウェル間の温度分布もより均一となります(B)。
氷上に直接置いたプレートは、蓋(Lid)やプレートシール済でない場合、かなり氷や水の混入がしやすくなります。CoolSinkモジュールは、安定した堅固な冷却プラットフォームとなり、氷とプレートを区切るため氷や水の混入のリスクを最小限に抑えることができます。
チューブをCoolRackの中に配置する、またはアッセイプレートをCoolSinkに配置することにより、簡単で費用のかからない方法で、サンプルを直接氷に接触させず均一にサンプルを冷却することができます。 融解した氷浴などの液体温源を用いる場合、堅固で安定した熱伝導性の土台としてThermalTrayモジュールを氷浴槽の中に入れて、CoolRackまたはCoolSinkを持ち上げることができます。 さらにこの方法は、サンプル容器を氷から離す一方で、下に示すように、氷が溶けてそのほとんどが水になってからもサンプルを低温に保ちます。
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(左)CoolBox XTにセットした微量遠心チューブ。(中)蓋を開けた場合は10時間まで、(右)蓋を閉めた場合16時間以上サンプル温度は均一に1℃近くに保たれる。
CoolBox XTは、保冷剤ゲルを用いた冷却容器の優れた代替製品です。ゲルを用いた容器は、冷凍庫から取り出すと不均一に融解し、外側のウェルが通常内側のウェルより温度が高くなり、ウェル間のサンプル温度にばらつきが出ます。CoolBox XTは、オプションのXT凍結コア(BCS-512)を用いることにより、実験ベンチ上で凍結サンプルを最大8時間まで保つことができ、ウェル間のサンプル温度も均一です。
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CoolBox XT中のXT 凍結コアは、サンプルを蓋を開けた状態で最大5時間、蓋を閉めた状態で8時間まで凍結状態に維持し、使用中は終始、すべてのサンプル温度が均一に保たれます。 |