アプリケーションノート
Question: 100%純銅チャンバーのクリーニング、除染、メンテナンスはどのように行うべきか?
1976年以来、Thermo Scientific社の100%純銅CO2インキュベーターは持続的かつ確実な細胞保護性能を提供しています。
研究により、この純元素に匹敵する効果を有するものは無いとされています。1 銅は特別な取扱い方法が必要でなく、メンテナンスは最小限で済みます。銅自身が有する効果により、化学的な消毒剤を使用する必要もありません。70%エタノールで付着した汚れを拭き取った後、中性洗剤と水のみで清掃することを推奨しています。銅本来の性質を保つためには、この方法を適切に順守してください。
100%純銅のチャンバーは、銅の性質を維持するため、メーカーが推奨する方法に従ってメンテナンス、清掃を行ってください。一定の時間経過によって、インキュべーター内の銅表面が変化するのは自然かつ、普通のことです。光沢のある赤橙色(図1)が、黒、緑、青色へと変化していきます(図2)。
これは、銅固有の自然な酸化現象で、銅の緑青形成や変色が起こる正常な過程です。2 水分が存在すると、このプロセスの進行が早くなります。そのため、水と接触する部分では、酸化が早く進みます。時間経過とともに、表面が酸化し、緑青が形成され、銅がより強くなり、またその抗菌効果も高くなります。3,4 表面はその後滑らかになり、またこの変色によって銅イオン量が増加し、培養細胞保護効果が高くなります。銅イオンは空気中に飛散せず、また腐食作用もないため、心配する必要はありません。さらに、この酸化被膜は銅表面にしっかりと付着しているため、細胞容器内の貴重な細胞に悪影響を及ぼすこともありません。
Themo Scientific社製のCO2インキュベーターは、”end of line”試験を行っています。この試験には、高温除染または滅菌サイクルの操作全てが含まれています。このサイクルの熱により酸化プロセスが開始し、緑青の形成が促進されます。これは、銅固有の自然な現象であり、また、インキュベーターに酸化が発生しているということはつまり、Thermo Scientific社が製造したインキュベーター全てに対し、試験を行っているということでもあります。
銅は、その表面に接触する物質により影響を受ける場合があります。そのため、こぼれた培地や汚れは速やかに取り除くことで、銅がその効果を最大限に発揮することができます。空気中に通常存在しない塩類や化学物質、または水が表面に接触すると、銅化合物が形成されることがあります。これらの銅化合物の組成は、インキュベーターの使用法や使用する水、または消毒剤の種類によって異なります。
世界中で様々な除染剤を入手することができますが、全てが細胞やインキュベーターに対して安全というわけではありません。銅固有の効果により、化学的な除染剤を使用する必要はありませんが、70%アルコールでの清掃、その後の中性洗剤と水での洗浄が必要です。なお、漂白剤を含む洗浄剤は絶対に使用しないでください。酸化作用を有する塩素系漂白剤またはその誘導体は、銅を腐食し、ダメージを与えます。
培養細胞に対して適切な加湿状態を作るため、加湿水にはpH7-9, 伝導率1-20μS/cmの滅菌蒸留水を使用することを推奨しています。5 伝導率が極めて低い水、例えばDI(脱イオン水)やタイプ1超純水などの、イオン濃度が低いタイプの水は、銅チャンバー表面や、ガラスドア、その他の内容物からイオンを浸出させ、ダメージを与えます。また、消毒剤を添加した水は使用しないでください。なぜなら、そういったものには往々にして高濃度の化学物質が含まれているため、加湿水としては使用すべきではありません。
以下のシンプルな手順に従ってクリーニングを行うことで、インキュベーターを清潔に保ち、また細胞の成長を良好に保つことができます。
除染剤の使用や、研磨剤などで緑青を除去する必要はありません。100%純銅チャンバーモデルの清掃方法は、ステンレスチャンバーモデルに比べ、極めてシンプルです。銅の性質により、清掃回数を減らすことが可能です。
以上でクリーニングは終了です。インキュベーターの環境が設定値に到達したら、細胞を戻してください。
100%純銅製のチャンバーは、銅の性質により、追加の除染剤による除染や、水への添加剤が不要なため、クリーニングおよびメンテナンスが容易です。