アプリケーションノートコールドチェーン
細胞遊走とは、細胞がある場所から別の場所に移動することですが、これは複数の段階が含まれたプロセスであり、創傷治癒、細胞分化、胚発生および腫瘍の転移において重要な役割を果たしています。細胞浸潤には細胞遊走が含まれますが、細胞浸潤は細胞が細胞外マトリックス(extracellular matrix: ECM)を超えて移動し、新しい部位に定着しなければなりません。
ECMは、基底膜抽出物(basement membrane extract)とも呼ばれ、プロテオグリカン、硫酸塩、プロテオグリカン以外の多糖、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチンおよびラミニンなど、多くの因子から構成されます。市販のトランスウェル製品の多くはECMで事前にコーティングしてあります。しかしながら、独創的な研究においては、細胞遊走や浸潤への影響を検討するために、ECMへの新規添加物が必要になることがあります。これらの因子への添加には、液体ECMを厳密に4℃に保ち、早期ゲル化を防ぐことが求められます。
対処法として、CoolBox XTワークステーションは、さまざまなCoolRackおよびCoolSinkモジュールに適応し、クリーンベンチやセフティキャビネット内での使用が面倒なアイスバケツより無菌性が高く、かつトランスウェルに加える前のECMの温度をよりよく制御します。
細胞浸潤または遊走アッセイに着手する前に、以下のポイントを考慮してください。
コーニング社のMatrigel™やTrevigen社のCulturex®、あるいは他の会社のECM(Extracellular Matrix:細胞外マトリックス)など、市販されているECMは、使用用途前の固形化またはゲル化を防ぐために4℃の温度で保つ必要があります。ECM は4℃では液体ですが、それより高温になると急速に固まります。ECMを4℃に保つことで、各ウェル中のECMの層が一様になり、ウェル間の変動が減少します。なるべく、アッセイ開始前の一晩、ピペットチップ、トランスウェル、ECMおよび添加剤をしっかりと冷却しておきましょう。
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氷上で直接冷却する現行法 組織培養プレートを典型的なアイスバケツに入れた氷の上に置くと、クラッシュアイスの中には不均一な断熱性エアポケットがあるため、ECMの温度が不均一になります。加えて、氷とそれが融解した水には微生物が存在するため、コンタミネーションリスクも高くなります。 |
CoolSinkを用いた冷却 CoolSink高熱伝導プレートアダプターは、組織培養プレートをよりよく熱制御します。特殊合金製のモジュールは、氷の温度に迅速に順応し(60-90秒で<4℃に到達)、すべてのチューブやプレートを同一温度に保ち(±0.1℃)、ECMが早々と固まってしまうのを防ぎます |
Coolbox XTを用いた冷却 再使用可能な冷却コアを用いることにより、プレートを10時間以上~1℃に保ちます。CoolBox XTにCoolSinkをセットし、氷に起因する問題を新たに生じることなく、組織培養プレートをよりよく熱制御します。CoolBoxを用いることで、優れた秩序、熱的安定性および無菌状態が達成できます。 |
注意:平底の96ウェル組織培養プレート用にはCoolSink 96Fモジュール、丸底の組織培養プレート用にはCoolSink 96Uモジュールと、2種の形状が入手可能です。
適量のECMをトランスウェルに加えた後、37℃インキュベーターに移します。37℃で均一に熱伝達を行うために、ここでもCoolSinkモジュールが使用可能です。調製次第で、ECMは37℃で急速に固まります。次に、準備した培養細胞を固まったECMの上に加えます。37℃でインキュベートすれば、ECMへの細胞の浸潤を評価できるようになります。CoolBoxとCoolSinkモジュールを4℃と37℃の両方の温度で利用した細胞「創傷(wounding)」アッセイと、その後の自動イメージングの応用事例(アプリケーションノート)は、Essen Bioscience社の下記のサイトでご覧いただけます。
Essen BioScience Cell Invasion http://www.essenbioscience.com/applications/cell-invasion/
Essen BioScience Cell Migration http://www.essenbioscience.com/applications/cell-migration/