コールドチェーン

GMP遵守に細胞融解の標準化は必要か

GMP遵守に細胞融解の標準化は必要か
Will GMP Compliance Necessitate Standardized Cell Thawing?

 

GMP対応の細胞培養施設への要求事項は厳しく、細胞融解を標準化する必要性は大きい(写真提供: Wikipedia)

*Astero Bio社が旧medcision社の事業を承継しておりましたが、Astero Bio社がBioLife Solutions社に吸収合併されたことにより、現在はBioLife Solutions社が事業を引き継いでいます。

近年、医療は急速に変化しています。
後期床試験および製品化が目前である細胞治療法は、製造方法、技術も、そのペースに合わせる必要があります。
BioProcess Online[1]で、同紙のチーフエディターのTrisha Gladd氏が、制御性T細胞の専門家であるDr. Karim Leeおよび旧medCisionの研究開発部門長Dr. Eric Kunkelと対談を行っています。対談の中で、一貫性のある効率的な細胞融解が、細胞製品のばらつきを必要最小限に抑える上で、どのように対応するのか説明しています。
細胞を取り扱う際の問題の一つとして、ばらつきの問題があります。もともと、細胞は環境の変化、特に凍結細胞の融解時に起こる温度変化に対して極めて繊細です。

UCSF(University of California, San Francisco)の移植研究室で研究者として働いているDr. Karim Leeは、その問題についてさらに説明をしています。彼女の研究グループは、臓器移植後の拒絶反応を抑えるため、制御性T細胞がどのように免疫反応を抑制しているかについて研究を行っています。

最近まで彼女の研究グループは、凍結細胞の融解で最も一般的に使用されるウォーターバスを使用していました。
Dr. Leeは、ウォーターバスには二つの問題があると言います。「1つ目は、融解後の細胞の回収率と生存率に大きなばらつきがある事です。2つ目は、FDAが規制する温度の安定性と無菌性を満たすために、ウォーターバスを定期的に監視しなければならないのですが、その監視に多くの時間を費やしたくない事です。」

GMP規則では、全ての機器、試薬は入念に監視することが明記されており、コンタミネーションのリスクから大抵の場合ウォーターバスの使用を不可としています。彼女の研究室の解決策が、旧medCision社のThawSTAR自動細胞融解システムでした。
ThawSTARシステムは、固相から液相への変化を自動検知することによって細胞融解を標準化するウォーターフリーのシステムです。Dr. Eric Kunkelによると、これにより容量が異なった凍結バイアル、あるいは異なった温度から融解されるバイアルに対し、再現性のある融解温度が得られます。

Dr. Kunkelは、「これは、加熱ユニットとチューブ間の隙間を、柔軟で不活性な材質によって埋めることで、非常に良い熱接触を提供しています…基本的にこれまで実現できなかった固体のユニットでバイアルを加熱する機構に加え、ソフトウェアやセンサーを利用したプロセスの監視や適応など、いくつかの解決法を組み合わせたもので実現されています」と話しています。

こちらから閲覧可能なBioProcessの記事で、新しい細胞融解システムが詳しく記載されています。また同様に、このようなシステムがGMP規則で管理されている臨床研究室で有用である理由も記載されています。必要性が発明を産みます。新たな細胞基盤技術の主要目標の一つが処理時のばらつきを抑える(細胞生存率や機能に影響を与えない)ということであれば、ThawSTARのような発明を採用することが利便性よりも益々必要になるでしょう。
新生細胞療法の市場に必要なことは、標準化に基づいた技術を支持し、いつの日か従来のウォーターバスを手放すことかもしれません。

参考文献:
[1] Gladd T. Cell Thawing: Are You Risking GMP Compliance With The Water Bath Method? BioProcess Online. Jan. 2015.

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