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COVID-19変異体の新たな脅威

最近の研究で、SARS-CoV-2について複数の変異が見つかっています。特性に関するデータが得られ、その変異が感染性の増強や高い免疫応答回避率につながることが明らかとなりました。この特性により、変異体のコントロールはさらに難しいものとなっています。大半の変異はウイルスの拡散に大きな影響を及ぼすものでは無いものの、変異体が見つかったというニュースは一般の人たちに恐怖を与えています。世界中の研究者は、感染率や承認されているワクチンの効果について研究を行い、これらの不安を軽減しようとしています。研究者はまた、変異体について得られた臨床的特長や疫学、ウイルス学的な知見を発信し続けています。
オリジナルのウイルス(野生型ともいう)の変異体の発見により、その伝染性への変化を含む病原体の振る舞いについて更なる情報が明らかとなりました。これらの変異型ウイルスは表1にあるように、英国、南アフリカ、ブラジル、日本などの様々な場所で見つかっています。変異型が急速に野生型を上回ったケースもあります。何故、これらの変異体が出現したのかについては、より詳細な調査や配列の解析が待たれますが、変異パターンの重複が報告されていることから、これらの変異がランダムに出現しているわけではないことが示唆されます。
最近の研究では、2019年に武漢で発見されたオリジナルのウイルス株よりも、変異型の方が重症化や死亡リスクが高いという根拠はほぼ得られていません。研究ではまた、これらの変異型ウイルスにワクチンがどのように作用するのかを理解するには、さらに情報が必要であることが示唆されています。

COVID-19変異株の比較(2021年2月5日現在)

変異型 B.1.1.7 P.1 B.1.351
別名 20I/501Y.V1
英国型
20J/501Y.V3
ブラジル型
20H/501Y.V2
南アフリカ型
第一検出 場所 英国 ブラジルおよび日本 南アフリカ
2020年12月 2021年1月 2020年12月
最初のサンプル採取日 2020年9月10日 2020年12月4日 2020年10月8日
顕著な変異 欠損 69/70
欠損 144Y
N501Y
A570D
D614G
P681H
E484K
K417NT
N501Y
D614G
K417N
E484K
N501Y
D614G
記録されている変化 感染性の増強 感染性増強の可能性
ワクチンの有効性 *予備試験では、承認されているワクチンの有効性に影響なし *最近の研究で、アストラゼネカ社のワクチンは野生株と比較しこの株に対する有効性が低いことが示唆されている
2021年2月5日までに変異株が報告されている国の数 73 11 32

*ただし、これは現時点(2021年3月)での情報であり、さらに詳細な研究が必要である

表1. 主なコロナウイルス変異株 (出典:US Centers for Disease Control and Prevention)

  • B.1.1.7 変異株
    この変異株は2020年12月末に英国で初めて検出されました。しかし、実際は2020年9月頃に発生したと考えられています。野生型株と比較し、感染性が高く、また死亡率も高い変異型ウイルスです。CDCの発表したモデルスタディによると、2021年3月までに英国における主要な変異株になる可能性があります。
  • P.1 変異株
    ブラジルのマナウスで発生し流行しているウイルスで、市内全体で200万人の大規模な感染を引き越しました。この変異株の幾つかの変異は、抗体のウイルス認識・中和能力に対し、影響を有していることが明らかとなっています。英国ではB.1.1.7 変異株の大規模なアウトブレイク発生に3か月を要したものの、P.1 変異株のマナウスでのアウトブレイクには1カ月しかかからなかったことから、研究者はP.1 変異株を、最も懸念される変異型だと考えています。この変異株は、日本(ブラジルからの旅行者に対する空港スクリーニング検査で初めて発見された)、およびアメリカで見つかっています。
  • B1.351 変異株
    この変異株は、遡って2020年10月に南アフリカで採取されたサンプルから発見されました。現時点で、この変異株が重篤度に対しどの程度の影響を有しているのかという実質的な証拠はありませんが、E484K(スパイクタンパク変異の一つ)がポリクローナル、モノクローナル抗体による中和に影響を及ぼすという研究もあります。この変異株の症例は、アメリカやザンビアで報告されています。

SARS-CoV-2変異株の急速な発生が世界に脅威を与えています。専門家はワクチン抵抗性の変異株が発生する可能性があると述べているため、もしこの変異株が発生すると、既に承認されているワクチンもこれに合わせて新しく開発する必要があります。しかし、現時点では依然として感染拡大が最も大きな懸念事項であり、特に感染に対し脆弱なコミュニティに対しては、集団予防接種を行う必要があります。

参考資料

[1] Doucleff, M. (2021, January 27). Why scientists are very worried about the variant from Brazil. https://www.npr.org/sections/
goatsandsoda/2021/01/27/961108577/why-scientists-are-very-worried- about-the-variant-from-brazil
[2] European Centre for Disease Prevention and Control. (21 January 2021). Risk related to spread of new SARS-CoV-2 variants of
concern in the EU/EEA. ECDC: Stockholm; 2021.
[3] Galloway SE, Paul P, MacCannell DR, et al. Emergence of SARS-CoV-2 B.1.1.7 Lineage — United States, December 29, 2020–
January 12, 2021. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2021;70:95–99. DOI: http://dx.doi.org/10.15585/mmwr.mm7003e2
[4] New Variants of the Virus that Causes COVID-19. (2021, February 2). Centers for Disease Control and Prevention. https://www.cdc.
gov/coronavirus/2019-ncov/transmission/variant.html
[5] New variant report. (2021, January 25). PANGO Lineages. https://cov-lineages.org/global_report.html
[6] Oxford/AstraZeneca jab fails to prevent mild and moderate Covid from S African strain, study shows. (2021, February 7). Financial
Times. https://www.ft.com/content/e9bbd4fe-e6bf-4383-bfd3-be64140a3f36
[7] Pan American Health Organization / World Health Organization. (January 20, 2021). Occurrence of variants of SARS-CoV-2 in the
Americas. Washington, D.C.: PAHO/WHO; 2021
[8] Reardon, S. (2021, January 29). The Most Worrying Mutations in Five Emerging Coronavirus Variants. https://www.scientificamerican.
com/article/the-most-worrying-mutations-in-five-emerging- coronavirus-variants/
[9] SARS-CoV-2 Variants. (2021, January 31). Centers for Disease Control and Prevention. https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/
cases-updates/variant-surveillance/variant-info.html

COVID-19ワクチン研究について

SARS-CoV-2に有効なワクチンを開発し、配布するという世界的な功績により、複数の有望な選択肢が出てきました。数カ月前から、幾つかの国でワクチン接種が本格的に展開され始め、パンデミックに打ち勝つという能動的な取り組みはゆっくりと現実のものになりつつあります。現在のところ、パンデミックを抑え込むうえで、世界的な規模の予防接種が必要不可欠です。そしてまた、変異型ウイルスの出現、限られたワクチン供給量による国際的な摩擦、ワクチン忌避などの新たな困難に直面しています。幾つかの国では、物流やワクチンの冷蔵貯蔵施設が不十分であることも望ましくない欠点となっています。これらの逆風はあるものの、2021年2月時点で、世界で100万回を超える接種が行われています。多くの国で、国民に対し予防接種を行う積極的な取り組みが行われていますが、ほぼ全ての国で国民の一部にしか接種が行われていないか、まだ開始していないのが現状です。ワクチンの普及が進む中、全ての人々が協力し、次ガイドラインに従ってこれ以上の拡大を防止することが重要です。

表2.1 主要なCOVID-19ワクチンの比較(2021年2月11日現在)

開発 ワクチン名 内容 フェーズ 有効性 投与回数 1か国以上での承認状況
ファイザー/ビオンテック BNT162b2 米国/ドイツ ファイザー社は第三相試験において、初めて有効性を報告した企業です。 2および3 95% 2 YES
モデルナ mRNA-1273 米国 モデルナ社およびファイザー社は、ともにメッセンジャーRNAを使用した新たなワクチンのアプローチを採用しています。 3 95% 2 YES
オクスフォード/アストラゼネカ AZD1222 英国/スウェーデン アデノウイルスベクター技術を利用。このアデノウイルスベクターは通常チンパンジーにのみ感染する風邪ウイルスの組み換えウイルスベクターであり、有害性はありません。 3 62-90% * 2 YES
ノババックス NVX-CoV2373 米国 タンパク質ワクチンで、英国型および南アフリカ型に対しても高い有効性がある。 3 89% 2 申請中
ジョンソン&ジョンソン Ad26.COV2.S 米国 1回の投与と、標準的な冷蔵で最も簡単に配布できるワクチン。同社は11月に二つの容量での試験を公表しています。 2および3 57-85% ** 1 申請中
シノバックバイオテック CoronaVac 中国 シノバック社のワクチンは不活化したCOVID-19ウイルスを使用し、免疫反応を惹起するワクチンです。 3 50% 2 YES
ガマレヤ Sputnik V ロシア スプートニクVとして知られるロシア製ワクチン。現在は数量を限定して販売されています。 3 92% 2 YES
ベクター研究所 EpiVacCorona ロシア シベリアで開発された抗原ベースワクチン。初期段階の試験で、その免疫学的有効性が100%であると報告されています。 3 100% * 2 YES
カンシノバイオロジクス Ad5-nCoVまたはConvidecia 中国 後期試験開始前に、中国軍への接種のため承認されたワクチン。無害な風邪ウイルスを使用し、遺伝物質を送達します。 3 65.7% * 1 YES
シノファーム BBIBP-CorV 中国 シノファーム社は完全な試験を行う前に、数十万回の投与を実施しました。 3 79% 2 YES
バラトバイオテック Covaxin インド 死んだコロナウイルスから作られた不活化ワクチン。 3 90% * 2 YES

出典:Council on Foreign Relations
*有効性は投与量に依存
**有効性は感染の重篤度および変異株に依存

適切なワクチン保存のためのクイックガイド

ワクチンは世界のヘルスケアに大きく寄与します。ワクチンの接種で免疫系が刺激され、ターゲットとなるウイルスやバクテリアなどの病原体を認識し、排除することで効果を発揮します。これにより、疾患にかからないための免疫を手に入れることができます。ワクチンは温度管理の厳格な製品であり、その効果を保証するためには製造から投与されるまでの間の適切な保管や保存を理解しておくことが必要です。

ワクチン保管の推奨事項および禁止事項は次の通りです。

専用の貯蔵設備を使用する

予期せぬ不具合によりサンプルの損傷や損失に繋がらないよう、研究グレードの冷蔵庫または冷凍庫を使用(購入)することを推奨します。

食物を入れない

ワクチン保管に使用する貯蔵設備で飲料や食物を一緒に保存してはいけません。研究室の冷蔵機器は消耗品の保存には使用しないでください。

使用期限の短いものから使用する

常に適切にサンプルを配置し、ワクチンは使用期限に従って保管する。先入れ先出し(FEFO)は、使用期限の短いものから先に払い出し、使用を行う在庫管理の手法です。

適切なラベリングと配置

ワクチンおよび希釈液は列に並べ、通気性を確保するため各列の間にはスペースをとる。詰め込み過ぎないようにし、全ての製品を適切に並べること。均一な通気性を確保するため、各列の間にはスペースを確保する。

データロガーを装備する

デジタルデータロガーを使用すると、ワクチンのプロバイダーは、温度の変動があったときにアラームを発報するようセットすることができます。また、デジタルデータロガーはチャートレコーダーと比較してより正確なモニタリングが可能で、適切なワクチンの保存環境を確保することができます。

適切な温度で保存する

要求温度範囲から外れた温度に曝露すると、ワクチンの効果が低下し、防げたはずの疾患の増加につながるおそれがあります。

開封したバイアルは保存しない

使用時まで開封せずに、元の包装のまま保存する。開封したバイアルは、投与ミスやワクチンの光への曝露リスクを高める可能性があります。


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本資料はESCO社が作成した"QUARTERLY NEWSLETTER|ISSUE1|JAN-MAR 2021"(英文)を、ESCO社の許諾を得てワケンビーテック株式会社が一部抜粋・和訳したものです。英語版と日本語版の間に内容の相違がある場合は英語版の内容が優先します。